2014年10月09日
限りある身の力試さん

先日、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩さん。出身は静岡県浜松市ということで県内でも賞賛の声が相次いでいます。
出身校は浜松西高、公立の名門校です。そこでの校長先生のことばが座右の銘となったということです。
下記の文章は名古屋大学HP上にある天野浩さんの教員紹介の一部です。
受験生の皆さん、ぜひ読んでみてください。
【受験生に向けた一言】 私は、中学生までは勉強嫌いで、何のために勉強しているのか殆ど理解しておりませんでした。
高校時代の朝礼の際、校長先生が”憂きことの、尚この上に積もれかし、限りある身の力試さん”、という江戸時代の儒学者の方の言葉を紹介され、とにかく勉強してみようと思い、その時から勉強に取り組み、なんとか本学に入りました。しかし、大学に入っても、何のために勉強するのかしばらくは分かりませんでした。
いつだったか、序論の講義の中で、ある先生が”工”という字は、人(一)と人(一)をつなぐ学問だよ、と言われて、勉強とは人の役に立つためにするということを初めて実感しました。
4年生になると卒業研究を決めるのですが、当時、赤﨑研究室の”青色発光ダイオード”というテーマに、まさにこれが世の人の役に立つことであると思いこの分野の研究を始めました。以来30年以上になります。
高校生の皆さんの中には、既に将来やりたい夢があって、それに向かって頑張っている人もいるでしょうし、なかなか決まらなくて不安に思っている人もいるでしょう。将来やりたいことなど決まらなくても大丈夫だよ、などと言うつもりは決してありません。将来の目標を持っている人と持っていない人は、大きく異なります。例えば、船でアメリカに渡る場合を考えてみてください。同じ船で、地図、羅針盤、GPSを持って太平洋に船出するのと、何も持たずに船出するのと、どちらがより早く目的地まで行けますか、という話と同じです。また、現在の社会状況、とくに日本を取り巻く環境は大変厳しいです。例え未来ビジョンを持っていても、夢のままで終わらせたら何も起こりません。
私がみなさんに伝えたいことは、不安に負けないで正面から取り組んでください、ということです。いつか未来がはっきり見えてきて、その実現に向かって皆さんが頑張ることができるよう、更にそれが実現できることを祈念しています。その手伝いが少しでもできれば、我々としては、それ以上の喜びはありません。